September 03, 2026
Tokyo-1 Drug Discovery Hackathon 2026 開催報告
AIエージェントとGPUで、研究者自身が創薬ワークフローを組み上げた2日間
2026年8月20日(木)、21日(金)の2日間、「Tokyo-1 Drug Discovery Hackathon 2026」を開催しました。本イベントでは、製薬企業、株式会社ゼウレカ、アカデミアの参加者が同じ会場と計算環境に集まり、バイブコーディングやAIエージェントを活用しながら、創薬研究の課題解決につながるワークフロー構築に取り組みました。また今回は、AIコーディングエージェントの活用を前提としたことで、ウェット系の研究者など、これまでプログラミングや大規模計算を日常的に行ってこなかった参加者が多く加わったことも特徴です。
昨年の「GPU × AI × 創薬」の共同検証をさらに発展させ、今回はリサーチトラックとビルドトラックを設定しました。限られた時間のなかで参加者が組織や専門領域の垣根を越えて知見を持ち寄り、実際に手を動かしながら、再利用可能な成果と次の共同検討につながるアイデアを形にしました。
開催概要
| 日程 | 2026年8月20日(木)~8月21日(金) |
|---|---|
| 会場 | 三井物産(株)人材開発センター(湯河原) |
| 参加主体 | 製薬4社、株式会社ゼウレカ、アカデミア、事務局・オブザーバー |
| テーマ | バイブコーディング/AIエージェントを駆使し、創薬課題に対するワークフローを共同構築 |
| 計算環境 | Tokyo-1 H100ノードを中心とする共有計算環境 |
| 構成 | リサーチトラック1件、ビルドトラック2件 |
Day 1:共通理解をつくり、チームで課題に向き合う
初日は、イベントの目的や進め方、Tokyo-1の計算環境を確認したうえで、参加者がチームに分かれて各課題に着手しました。アカデミアからの知見提供も交えながら、研究上の問いをどのように計算可能な課題へ落とし込み、短期間で動くワークフローへつなげるかを議論しました。
3つの挑戦テーマ
● リサーチトラック:抗体-抗原複合体の構造予測とエピトープ・パラトープの同定、scFvリンカー改変体の熱安定性ランキング
● ビルドトラック 1:Evo2を活用した業務ワークフローの構築
● ビルドトラック 2:主に低分子創薬の課題を解決する、学習を含むワークフローの構築
参加者は、精度だけでなく、実用性、汎用性、新規性、再現性も意識しながら、チームごとに検討と実装を進めました。プログラミング経験の少ない参加者が、チーム内の専門家の助言とAIコーディングエージェントの支援を受けながら、自らの手でワークフローを組み立てる場面も随所に見られました。共通の計算環境を使うことで、アイデアをその場で試し、結果をもとに議論を更新する密度の高い協働が生まれました。
Day 2:成果を共有し、次の共同検討へつなげる
2日目は、前日からの検討と実装を継続し、各チームがデモと成果発表を行いました。リサーチトラックでは与えられた課題に対して様々なアプローチの検討と予測精度を、ビルドトラックでは実用性と新規性を主な観点として、アプローチの工夫や得られた知見を共有しました。
発表では、完成した成果だけでなく、試行錯誤の過程、うまくいかなかった点、次に検証すべき論点も共有しました。短期集中型の活動で得られた成果を単発で終わらせず、Tokyo-1コミュニティで参照できる形に整理し、今後のSWGテーマや日々の研究業務への展開につなげていきます。
「自分でも構築できる」という手応え
今回、実装の担い手となったのは、計算科学の専門家だけではありません。AIコーディングエージェントに実現したい処理を言葉で伝え、返ってきたコードを試し、うまくいかなければ相談して直す——バイブコーディングのこうしたサイクルを通じて、ウェット系の研究者など大規模な計算環境に日常的には触れてこなかった参加者も、GPU計算環境の上で自らワークフローを構築するところまで到達しました。
もちろん、すべてが独力で完結したわけではなく、チーム内の専門家や事務局の伴走、そしてAIエージェントの支援があってこその成果です。それでも、「自分でも大規模計算機を用いたワークフローを構築できる」という手応えを持ち帰れたことは、成果物と同じくらい大切な収穫であり、日々の研究業務のなかでAIエージェントを活用し続けていくための出発点になると考えています。
Tokyo-1コミュニティが目指す共創
Tokyo-1は、計算環境やソリューションの提供に加え、組織を越えて知見を共有し、共同で検証するコミュニティづくりを重視しています。今回のハッカソンも、参加者が同じ場所、同じ計算環境で手を動かし、「参加する・助け合う・教え合う」を実践する機会となりました。
AIエージェントや基盤モデルの進化によって、創薬研究のワークフローは大きく変わりつつあります。その担い手も計算科学の専門家に限られなくなりつつあり、今回のハッカソンは、参加者自身がその変化を体感する機会にもなりました。Tokyo-1では、技術を紹介するだけでなく、現場の課題にあてはめて試し、成果と課題を共有し、次の実践につなげる活動を今後も推進していきます。
